11月18日開催の文学フリマに出店します。

タイトルそのままですが、11月18日開催の文学フリマに出店します。
新刊『四畳半Cube 弐号室』を販売します。

以下詳細

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【イベント】
開催日:2012年11月18日(日)
開催時間:11:00〜17:00
会場:東京流通センター 第二展示場(E・Fホール)
アクセス:東京モノレール流通センター駅」徒歩1分
一般来場:一般の方は入場無料です!

詳細:http://bunfree.net/


ブース位置:Fホール(2階) 【エ-18】


【同人誌】
≪タイトル≫
『四畳半Cube 弐号室』


表紙:なのさん



≪内容≫

●[小説]桃色の憂鬱/西出季生
→桃色ブリーフ職人の一日にせまったドキュメンタリー。

●[評論]森見読者に知ってほしい 新3大 丹波四郎/よっしー
→『恋文と技術』には単行本化によって消された登場人物がいた。消された男にして孤高のマンドリンニスト、丹波四郎とはいったい!?

●[小説]あくがれ タヌキ/ちよ
→居酒屋のレジ横におかれたタヌキの信楽焼。動けないモノがしゃべる世界で、僕は一つの夢をいだく。

●[特集]MORIMI’S キッチン
→森見作品ゆかりの料理のレシピを紹介。

●[小説]百万遍交差点の怪人/ユメ見ズ
→ 連絡がとれなくなった明石さん。その原因と噂される百万遍交差点の怪人とは!?

●[小説]いつか脱ぐ日よ/小林淳一
→ 『夜は短し歩けよ乙女』に登場するパンツ総番長。彼がそこまで阿呆になった過去が明らかになる。

●[考察]俗・森見ヒロイン的おっぱい懐疑/なっちゅ軍曹
→森見作品に出てくるヒロインは、果たしてどんなおっぱいをしているのか!? たったの3人の考察で終わった前作を遙かにしのぐ、全森見ヒロインを網羅した完結編! もう二度とやりたくないです!


≪詳細≫
発行部数:150部
価格:500円
ページ数:116ページ

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今回も表紙は前回と同じく、なのさんが描いて下さいました。なんと素敵な表紙でしょう。この表紙の為に買う価値が十分あります。本棚に飾るだけでインテリアとしても使えます。大変、万能な同人誌となっています。前作と比べるとボリュームは減ったけど、森見愛をより濃厚に詰め込みました。お求めやすい値段になって、気軽に買って頂きたいと思います。

また、当日配布予定のフリーペーパーも制作中です。コラムや四コマ漫画など、このフリーペーパーも中々の読み応えとなっています。来客者限定で配る予定なので、気になる人は是非遊びに来てください。同人誌は買わなくても、フリーペーパーは差し上げます。

そして、当日は前作の『四畳半Cube』も販売する予定です。前作と新刊をセットでご購入頂けた方は、特別に2冊1000円で販売を検討しています。お買い得でっせ!

そんでもって、先日ユーストリームで宣伝ラジオ? をやりました。何やら録画が視聴できるみたいなので、興味がある人は見て下さい。カレー評論本を作成している「ガラム政宗」さん、出会い系俳句を主催している「よしだおか」さんと合同で撮りました。自分で言うのもなんですが、僕はことごとく滑っております。二度と見たく無いです。でもやってる最中は楽しかったです。また機会があればやりたいくらいです。

ユーストリームhttp://www.ustream.tv/recorded/26905780
Youtube(画質・音声修正版) : http://youtu.be/HoVKxM5tzvE

(11/20追記 上記録画は出演者の意向から第十五回文学フリマを過ぎたら消しちゃおう、ということだったので、予定通り削除しました)

そんな感じで、もしご興味がある人と11月18日が暇な人は、是非遊びに来てください。

よろしくねっ (・ω<)





★記事サンプル★

●[小説]桃色の憂鬱/西出季生
桃色ブリーフ職人の朝は早い。
太陽が地平から顔を出し、地上が薄明るい光で照らされ始めた頃、彼はずっと前から起きていたかのような自然さで、するりと目を覚ます。彼の睡眠と覚醒の不連続さを拒否するような朝の目覚め方には、どこか敬虔さが存在している。
遠くで鳥たちが囀るのを聴きながら、布団をたたみ、顔を洗い、軽い朝食を済ませると、職人は作業服に着替え、神棚に祈り、そして作業場へ向かう。
そこで彼を歓待するのは大量の白いブリーフたちだ。プラスチック製のカゴに積まれた彼らは、職人の手によって、誰もが「なんと破廉恥な!」と叫びたくなるような桃色に染められるのを待っている。ただの桃色ではない。誰もが認める破廉恥な桃色、でなければならない。
職人は、自分の仕事に誇りを持っている。あらかじめピンク色をした糸から縫製されたブリーフでは、決して出せぬ色がある。形作られる前から桃色のブリーフなど、桃色ブリーフではない。本来は純白であった穢れなきブリーフたちが、破廉恥極まる桃色に染まっていく過程こそが肝要なのであって、最初から桃色であってはつまらないのである。
職人の長年培われてきた技術による染色作業を経て、かつて純白であったブリーフたちは己の宿命を受け入れ、桃色ブリーフとしての第二の人生を歩み始める。なんら変哲のない普通のブリーフとして生まれついたはずの彼らが、真の桃色ブリーフへと変身を遂げる、その生まれ変わりの瞬間にこそ意味があるのだ。
桃色、というのも難しい。それはピンク色の一種である。だが少し恥じらいを秘めたかのような、薄いピンクである。
最近の若者が着ている、ど派手なショッキングピンクなどは、アバンギャルドだかなんだか知らないけれども職人からすれば「恥をしれ! しかるのち死ね!」とでも言いたくなるような代物であって、誇りも色気も可愛げもない。
職人の欲するは絶妙なる色味。「我、此処にあり」と存在をあくまで主張はするけれども、しかし「ハズカチー」とばかりにそれを抑え込もうとする意思も共存しているような、そんな押し合いへし合いせめぎ合いの間で、思わずポロリとこぼれでた桃色。それこそが職人の目指すところである。



●[評論]森見読者に知ってほしい 新3大 丹波四郎/よっしー
「みんなは“孤高のマンドリニスト丹波四郎”の事を知っているかい?
もちろん俺は知っているぜ!今日は彼の事を知ってほしくて、特別にこのスペースを借りて某番組風に彼の魅力を3つの点にまとめてみたよ☆題して〝森見読者に知ってほしい新3大丹波四郎〟丹波四郎で迷子にならない為にもついてきてくれよな!」

丹波四郎は誤解されている。
『恋文の技術』はポプラ社の冊子『asta*』に連載されていた時と比べ大幅に加筆、修正が加えられた作品です。その編集という歴史の闇の中でいなくなった登場人物や、なかったことになった設定もあります。その中にあのマンドリニスト丹波四郎もいるのです。《無意味と傲慢が四畳半で出逢って生まれた男》丹波さんが消えてしまっている。連載時の彼はもっと色濃く印象強い人で、ただの名脇役に留まるような人じゃない。丹波四郎は犠牲になったのだ。そんな丹波さんの魅力を出来るだけ伝えられればと思います。
でも、この〝新3大丹波四郎″の記事自体は『恋文の技術』の連載版にはこんなこともあったんだ。程度に読み流してもらって、丹波さんが出る作品に興味を持つ人が少しでも増えればそれはとても素敵な事だと思うよ。



●[小説]あくがれ タヌキ/ちよ
暗く靄がかった頭に響いたのは、生まれた理由だった。
「レジ横が寂しい」
僕はレジ横が寂しいから生まれた。
二つに合わさった型が外されると、ぼんやりとした視界に肌色が動いていた。にゅっと伸びて僕をぺたぺた触ったり、何かを貼りつけたりする。肌色がなくなると、別の部屋に運ばれた。
目がハッキリ見えるようになったとき、同じ木板の上にヘンテコな置物が二十個ほど整然と並んでいるのが見えた。腹がでっぷりと突き出たその姿は何だかおかしかった。
僕はその置物達を笑った。
頭の上や腹にひやっとした液体が塗られた数日後、真っ暗な部屋に閉じ込められた。突然、四方から青い炎が立ち上がり、みるみるうちに温度が上がった。皮膚からぷつぷつと水が出た。ひどい熱さだった。熱いというより痛い。焔(ほむら)は渦を巻き、重い空気と共に僕を何度ものむ。懸命に痛みに耐えているとき、前段の置物が(ぎゃっ)と悲鳴を上げた。轟音のなかで、その声だけやけに際立って聞こえた。変な声だった。変な姿だから出す声も変なのだ。僕はあんな声は出すまいと思った。
しかし、僕の体にも変化が起こった。徐々に体が前後に引っぱられ、その力が強くなる。そのうちパンと弾けるような音がした。熱風が内側に入り込み、頭がもうろうとした。
温度が下がり、扉から光が差し込んだとき、僕の皮膚は硬く硬く焼き締まっていた。前段の置物は二つにばっくりと裂けて、がらんどうの中身を晒していた。

「ごくろうさん。ぎりぎりやったなぁ。」
人から初めてかけられた言葉だった。タオルを頭に巻いた老人は、くしゃっと笑った。
僕と他の置物達は、野外の草地に置かれた。
外に出されると木々の鮮烈な緑が目を射た。オオバコの下を蟻がひょこひょこ歩いてゆく。森の陰から跳んできた飛蝗(ばった)がコツンと僕に抱きつこうとして滑り落ちた。
そのうち空が色に染まった。
初めて見る夕暮れは色にあふれていた。夕暮れは夜になり、月夜に変わった。
銀色の大きくやわらかな風が林の上を渡ってくる。
風は僕のなかにも入り込み、体の奥で静かに止まった。
(ごくろうさん!ごくろうさん!)僕は喚いた。
この音が口をついて出た。周りの置物達も(うー)とか(あー)とか声をあげていた。



●[小説]百万遍交差点の怪人/ユメ見ズ
「明石さんと連絡が取れない?」
「そうなのよ」
それは羽貫さんの電話から始まった。 羽貫さんは明石さんと四条に新しくできた西洋菓子店に行く約束をしていたのだという。しかし、待ち合わせの時間を過ぎても、明石さんはいっこうに現れない。
「携帯電話には連絡してみたんですか?」
「何度もかけてみたんだけど、ダメね」
私の知る限り、明石さんが約束に遅れたことは、これまで一度もない。すっぽかすどころか時間前には到着している人である。これには私も驚きを隠せない。何か急用が入ったにせよ、連絡ひとつ寄越さないというのは、彼女らしからぬ行動である。
「何か変なことに巻き込まれてなきゃいいんだけど」
羽貫さんは不安気に言った。
「とりあえず彼女の連絡を待ちましょう。僕からも連絡してみ ます」
羽貫さんの言う、何か変なこととは一体何を指すのだろうか。 その言葉がやけに耳に残り、胸騒ぎを覚えた。一息ついた後で、明石さんに電話をかけてみる。 長いコール音が続き、それは留守電話へと行き着いた。 自動音声が明石さんの不在を告げる。私は虚しくなり、電話を切った。蝉の声が疎ましい暑い夏の日のことである。

明石さんの行方を憂いていると、いつものように、小津がアパートにやって来た。私が羽貫さんとの電話のやりとりを話すと、「あの明石さんが約束をすっぽかすとは、どうも腑に落ちませんね」小津もまた、怪訝な表情をして、首を傾げた。
それからしばらくの間、私達はたわいのない話を延々としていたのだが、小津がある話を切り出した。
「京都の新・七不思議をご存知ですか」
「知らないな」
「巷はこの噂で持ちきりですよ」
「どうせ根も葉もない噂だろう」
「それはどうでしょう。まあ聞いてください」
小津は、これは人から聞いた話なんですけどね、とお決まりの文句をつけて、滔々と語り始めた。
「一つ、天狗の止まり木。二つ、深大寺の井戸の声。三つ、ビリヤード場の貴公子。四つ、天駆ける美女。五つ、あの世に通じる階段。六つ、空飛ぶ叡電。そして七つ目が」
「七不思議というものはたいがい六つ止まりじゃないのか」
と口を挟むと、それがあるんです。と小津はただでさえ不気味な顔をぐにゃりと歪ませ、こう言った。

「七つ、百万遍交差点の怪人」



●[小説]いつか脱ぐ日よ/小林淳一
これは私のある友人の話だ。のちにパンツ総番長と呼ばれる男の話であり、彼の苦闘の記録でもある。それは人によっては馬鹿馬鹿しいと言われるかもしれない。しかし、ある人にとっては涙無しでは聞けないかもしれない。またある人には「世の中にこんな阿呆な男が居るのか!」と驚かれるかもしれず、またある人には「こんなに気骨がある男が現代日本に居たとは!」と思っていただけるかもしれない。いずれにせよ、彼ほど迷走した青春を送る男を私は知らない。しかし、本人は迷走などとは思わず、一直線に走っていると思っているかも知れない。ともあれ、これからする話は彼の青春の一部だ。そして、それは私の青春の一部でもある。願わくは彼に声援を。

彼は高校生になるまで、いたってごく普通の少年だった。中学生の三年間は柔道部に所属していた。実力としては、地区大会の準決勝止まりであった。しかし、二年生の夏に上級生が引退してからは彼の面倒見や気受けの良さから、まわりの部員や顧問の先生からは当然の如く主将に任命された。また、クラスでは誰とでも親しく、男子からの人望があるばかりか、その男らしい性格と精悍な顔つきで彼に好意を持つ女子も少なくはなかった。故に三年もの間に、数人の女子から告白をされたようであるが、彼は「部活や勉強で忙しいから」とそれらを断ってきたようだ。彼は硬派で奥手な性格であったようだが、私にとってはそのモテモテぶりはうらやましい限りである。ともあれ、彼はそのような中学校での生活を送り、高校はとある私立の進学校へ入学した。私とはそこで出会うことになったのだが、このときはまだ、彼にはパンツ総番長の「パ」の字もなかった。




●[考察]俗・森見ヒロイン的おっぱお懐疑/なっちゅ軍曹
前回の同人誌において、私は森見登美彦氏の魅力をおっぱい方面から検証した。それは厳しく、そして辛い作業であったと言わざるを得ない。考察は熾烈を極め、その内容は詭弁と妄言のみで彩られた。その結果「これだけ素晴らしいおっぱいを描く森見氏は、やはり素晴らしい作家である」という結論に行きついた私であったが、その考察は、文字数やページの関係上、たった三人のヒロインで終わってしまった。たった三人である。

確かに考察は成功したと言わざるを得ない、納得の出来栄えだった。〝いい仕事、したな〟という自負もあったし、完成した後に飲んだビールも、最高に美味かった。あの喉越しは、そうそう出るものでは無い。肴の冷奴も、私の脱稿を祝福してくれていた。しかし、果たして三人だけで結論付けてしまっていいのであろうか? というシコリが、私の胸中に残ったのは確かであった。シコリは時間が経つほどに、その大きさを増し、私の心を確実に蝕んでいった。心が蝕まれている状態で飲むビールも、また最高に美味いので思わず暴飲暴食を繰り返してしまった。このままでは、胸のシコリがおっぱいの様に膨らんでしまいそうであった。私は男なので、おっぱいなんぞいらないのである。

しかるに、そのシコリを取り払わんと、私は再び〝森見ヒロイン的おっぱい懐疑〟に挑む事にした。考察すべきヒロインを多く残している現状で、前作の結論は時期尚早であったと言わざるを得ない。私は森見登美彦氏と、その作品が大好きだ。大好きだからこそ、いま一度、慎重に、徹底的に、その魅力を追及していきたい。これはファンとしての責務であり、〝森見ヒロイン的おっぱい懐疑〟を提唱した私の義務でもある。故に私は今回、全てのヒロインを網羅し、この命題との決着をつける気概である。その道のりは、前作よりも険しく、さらに荒唐無稽であろう。その内容は、より阿呆らしく、詭弁と妄言でのみ彩られることだろう。しかし期待をしてはいけない。続編というのは往々にして派手なだけで、中身はより空っぽになるものである。前作であれだけ空っぽであったのに、更にその上を行くつもりである。それが続編というものである。ゆめゆめ忘れることなかれ。

森見ヒロイン的おっぱい懐疑、完結編。おっぱいと私の戦いが、今、幕を開ける。